無間の鐘新道成寺 続き−5
傾城葛城は三山との昔を思い出す。 「間夫(まぶ)の男は面憎や 抱いて寝たときゃ われならで ほか女郎にゃ逢わぬというて だましくさったが口悔しうてならぬ 誓文くっされ騙しはせぬが 引くに引かれぬ心があれば それは寝てからその言い訳をしょうぞいの あゝいやらしい何ぞいの 昔の悪性したらいでのう 今のしなしは可笑しやな」 間夫とは情人のことをいう。...
View Article無間の鐘新道成寺 続き−6
三山との他愛もない戯れの回想が終わると、 次は一転して恐ろしい苦しみが始まる。 なぜなら、来世で無間地獄に落ちることを覚悟して 葛城は無間の鐘(もちろん手水鉢だが)を打って金を手に入れたからだ。 地獄の責めは、閻魔大王との約束なのだ。 しかも、ここで女形のエロスを見せる事ができる。 「これは過ぎにし言の葉の あゝ夜昼となき苦しみは 無間の鐘の恐ろしや 苦しむ苦艱(くげん)近づきて...
View Article下浚い
きょうは11時から国立大劇場で泉流2代目宗家と、 3代目家元の襲名披露公演がありました。 私は初番の荻江「松竹梅」に出演しました。 終わってから国立の食堂でお昼を食べて、 今度は高樹町の家元宅で明日のゆかた会の下浚い、 久しぶりの掛け持ちです。 6時頃終わり、郁子氏と早い夕食です。 いつものイタリアンですが、 途中からお嬢さんが参加し、楽しい時間となりました。 話が尽きず、結構飲みました。...
View Article東京ゆかた会
きょうは11時から有栖川の料亭清水で 家元の東京ゆかた会がありました。 大勢のお弟子さんが日頃の成果を披露なさって、 とてもいい会でした。 写真は中村鷹之資くんの「鞍馬山」です。 中村富十郎氏のご長男で、もう16歳、 ずいぶんと青年らしく成長されました。 清潔感のある、素敵な青年ですよ。 将来が楽しみです。 舞台袖からこっそり撮っちゃいました。 唄は長一郎氏です。...
View Article観月会
きょうは7時から、坂出の香風園で観月会がありました。 今藤郁子氏と、美佐緒氏をお呼びして 「岸の柳」「越後獅子」「楠公」を演奏しました。 きょうの月はスーパームーンという、月が最も地球に近づいたものだとかで、 並外れて大きいのです。 確かに素晴らしい満月でした。 お天気はいいし、暑くなく、からっと爽やかという環境でした。 お客様も一杯で、とても静かに聴いて下さいました。...
View Articleのんびり
きょうは朝郁子さんたちをホテルに迎えにいき、 駅までお送りして美容院へ。 この美容院は、私の小学校の同級生がやっている美容院で、 けっこう気に入っています。 小学校の頃は鼻たれ小僧だったFクンが りっぱにオーナーをやっているのですから、面白いものです。 ヘッドスパで癒され、 帰りにスーパーで買い物をして、仕込んでから 近所の温泉さらいに行きました。 夕方でしたので、あまり人もいなくて...
View Article坂出
きょうはマンションの配管工事で、 朝8時半から職人さんが入ります。 その前に家を出ようと、早起きをして、 地下鉄に乗ったら、朝のラッシュで大変! 一台見送って東京駅に行き、 9時過ぎの新幹線で坂出に帰りました。 この時間帯に乗るのは久しぶりですが、 結構混んでいました。 世の中は早くから動いています。
View Article観月会写真
市のホームページに観月会の写真がアップされていましたので、 拝借しました。 こんな感じで芝生の上が客席となります。 120人ほど見えたそうです。 左上に光っているのが、スーパームーンの光です。 アングルがもう少し上だとバッチリ撮れていたかも。 左が今藤郁子さん、右が美佐緒さん、真ん中が私です。 蚊取り線香はそこら中に置いていたのですが、...
View Article庭の手入れ
きょうはいいあんばいに涼しかったので、 庭の手入れを思い立ちました。 まずは中庭の笹山。 石に出張って来る笹を引き抜き、笹山の形を整えます。 笹を引き抜くのって結構大変なのですよ。 仕上げははさみで、縁の部分を丸く刈り込みます。 次は表の植え込みの調整です。 同じ時期に刈っても、でっこみひっこみができて 不揃いになってくるのです。 それにヘクソカズラがのさばっています。...
View Article熊本浴衣会
きょうは熊本浴衣会の下浚いです。 2時からですので、11時過ぎの新幹線みずほに乗って、 熊本に行きました。 岡山から直行で2時間15分です。 便利になりました。 終わって馴染みの日本料理屋さん「喜三遊」でお食事。 ここは先代、当代のおかみさんが今藤の名取りさんです。 東京から家元の甥御さんがいらしていたので、 おかみさんが気をきかせて馬刺を振るまってくれました。...
View Articleくまもん
きょうは2時から熊本浴衣会です。 ゆっくり始まりますので、12時に集まって まずはお昼を全員でいただきます。 熊本の会は食べる事が一番みたいなものですから!? 夕方終わって、こんどは家元お気に入りの料理屋 「松葉」で会食。 和気あいあいとおいしいお料理をいただき、 わたしは一足お先に、大阪組の人と新幹線さくらに乗って 坂出に帰りました。 仕事をしにいったのか、...
View Article彼岸花
きょうは秋の永代経法要でした。 春と秋に行われるこの法要は寺の大事な行事の一つです。 大勢のお寺さんが見えて、お経をあげます。 そして住職のありがたい法話があり、 終わると、檀家のご婦人方が作った うどんとお寿司が振る舞われます。 朝から下の台所からは賑やかなしゃべり声とともに、 おいしそうな匂いが漂ってきます。 子供の頃から何度も経験した感覚ですが、 久しぶりに遭遇しました。...
View Article大阪芸術大学
きょうから後期の授業が始まりました。 6時前に起きて、岡山朝8時発の新幹線で大坂へ。 10時半に大学に到着しました。 後期のレッスンは基礎ができているという前提で進めますので、 ふわふわとやりすごして来た学生は、青息吐息です。 どうしても出来不出来が顕在化してくるのですよね。 これは人生に似ているかもしれない。 前半を一生懸命に生きていないと、 後半に取り返しのきかないつけが回って来るのですよ。...
View Articleゆなちゃん
きのうの夜、東京に戻りました。 留守中に配管工事があったので、ちょっと心配だったのですが きれいに仕上がっていました。 セキュリティー上の問題もなく、やれやれでした。 おばあちゃまのお稽古についてきた、ゆなちゃんです。 お姉ちゃんのさゆちゃんは、隣で折り紙に夢中です。
View Article無間の鐘新道成寺 続き−7
9月5日の続きです。 地獄の責め苦にあえぎ苦しむ傾城葛城は ついに力尽きて倒れ臥し、我が身の浅ましさを悟る。 「流れの罪科(つみとが)地獄のありさま 花も一と時 月の光もうつるや夢の 月の光もうつるや夢の 定めなきこそ浅ましき」 瀬川菊之丞の踊りと、坂田兵四郎の長歌で 「無間の鐘新道成寺」は大当たり、3ヶ月ものロングランを打った。 〓 〓 〓...
View Article風流相生獅子−1
「無間の鐘新道成寺」のヒットから3年後(享保19・1734年)の3月、 菊之丞は『夕霞浅間嶽』(ゆうがすみあさまがたけ)の切り(終わり)に 「風流相生獅子」(「相生獅子」)の所作を出した。 ”浅間物”では、裏切った男によって燃やされた起請誓紙 (変わらぬ愛を誓った証文のようなもの) の煙の中から、傾城の霊(生霊であったり、亡霊であったり)が出て、 男をなじるのものと相場が決まっている。...
View Article風流相生獅子−2
ひとたび馴染みとなった客は、 ほかの遊女との浮気は許されぬ、というのが廓の掟なのに、 奥州から三浦に移り気をした巴之丞は、起請誓紙を燃やしてしまう。 すると不思議や、煙のなかから奥州の生霊が現れ、 巴之丞に恨みをのべる。 瀬川菊之丞の「相生獅子」は、”浅間物”の三番目に出された所作ゆえ、 当然”浅間物”の範疇に入る。 ならば、菊之丞演じる傾城奥州の霊は、起請誓紙を燃やした煙の中から出るべきだが、...
View Article風流相生獅子−3
菊之丞は「傾城道成寺」で鐘の中から、傾城葛城の亡霊を出したのと 同じ発想で、奥州の生霊を石橋に出し、 恋に悩む遊女の心を、大巾(たいきん・牝獅子)・利巾(りきん・牡獅子) の手獅子を使って見せる、という趣向を考えだした。 能の「石橋」は精霊が主人公。 奥州は生霊だが、獅子の精ということにすれば、 石橋に現れても不思議はなかろう、という計算か。...
View Article風流相生獅子−4
石橋の幅は約30センチ、長さ約9メートル、 形は虹のように湾曲し、しかも表面にはびっしりと苔がむしている。 橋の向こうは文殊菩薩の浄土とされており、 天上からは花が降り、つねに妙なる楽の音が流れているという。 そして、この橋を守るのが、文殊の使者である獅子だ。 いかなる高僧、貴僧といえども難行、苦行、捨身の行を積まなければ この橋を渡ることはできない。...
View Article風流相生獅子−5
「石橋」−1 菊之丞の「相生獅子」は、本行(能)の「石橋」をぐっと解釈替えしたものだが、 本行がどんなものかを知らないことには、どう違えたのかも分からない。 まずはきちんとした「石橋」の歌詞を知っておく必要があるだろう。 のちに(相生獅子から約100年後の1830年)に杵屋六左衛門(10代目)が 外記節に残る「石橋」を復元したものが、 いわゆる正統といわれる、以下に記す「石橋」だ。...
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