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Channel: 西園寺由利の長唄って何だ!
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賤機帯−7

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賤機帯−7


原曲となった能の「隅田川」ではこの後船頭は、
女を舟に乗せてやる。

向こう岸の柳の陰に大勢の人が集まっているのを、
いぶかしく思った客が船頭に訳を聞くと、
「人さらいに連れられた子供が、去年の今日ここで行き倒れ、
今日は大念仏がおこなわれる」という。

女がさらに聞くと、その子の名前は梅若丸、
年の頃は12歳、父は吉田の某という。
「何と、まさしく探し求めていた我が子!」

舟を下りた女が、その塚の前で供養の念仏を唱えると、
梅若の声がして幻が現れるというもの。

長唄ではこの場面は省略されていて、
狂女が羯鼓(かっこ。腰鼓)を打って舞う、
という設定で日吉の大祭に誘導し、段切れとなる。

「賤機帯」は浄瑠璃ものでも、抑揚をおさえた一中節なので、
「靭猿」や「楠公」のようにダイナミックに訴えかけるものは少ない。
この曲はじーんと心に響く、という作りだ。

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tea break・海中百景
photo by 和尚


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